オフィーリア_ジョン・エバレット・ミレイ

かなりショックな絵です。

女性が浅瀬の中で
溺死しているのです。

こんな怖い絵は
いったい
何を意味しているのでしょう。

この絵の題材は
シェイクスピアの
戯曲ハムレット』です。

その内容は

ハムレットの父である
デンマーク王が突然亡くなり、
その弟クローディアスが
デンマーク王の座に就き、
ハムレットの母までも
クローディアスと結婚し、
王妃の座にいました。

これに納得しないハムレット
父が弟クローディアスに
殺されたことを知り
復讐を誓います。

ハムレットには、
好きな女性がいました。

それは
宰相ポローニアスの娘、
オフィーリアです。

オフィーリア
また
ハムレットのことを
好きでしたが
父ポローニアスは身分違いの
二人の恋を認めていません。

そこでポローニアスは
ハムレット
オフィーリアに当てた
恋文のことを
クローディアス王と王妃に
狂気を起こした行動だと報告しました。
それを聞いていたハムレットは、
あえて狂気を装うことにしました。

ハムレットの狂気ぶりに
心配したオフィーリアでしたが
ハムレットが彼女を無下に扱い
「修道院へ行け」とまで
暴言を吐きます。

この言葉は、
もうハムレット
オフィーリアのことを
好きではないと
捉えても仕方ないことです。

オフィーリアは、
深い悲しみに襲われ、
泣き崩れてしまいました。

そんなある日
ハムレット
宰相ポローニアスを、
クローディアスと間違えて
刺し殺してしまいました。

そのことを知った
オフィーリア
悲しみのあまりに正気を失い、
歌を歌い、そして口走りながら
ふらふらと柳の木がある
小川のほとりへ行き、
キンポウゲイラクサ
デイジーで作られた花輪
枝吊るそうとして、滑らせて
花輪もろとも川へ
落ちて沈んでいきました。

 

 

ミレイは、
この絵を描くにあたって
まず背景になる場所を探しました。

ミレイ

深くて小さな川で、
川沿いに柳が枝を
突き出しているところ

そして、
サリー州ユーエル付近の
場所を選びました。
オフィーリア_ジョン・エバレット・ミレイ
1851年6月から
背景の制作にとりかかり、
葉や茎、
水面に揺らめく光や影にも
緻密な描写で描きました。

作業は
10月までかかったそうです。

オフィーリア_ジョン・エバレット・ミレイ

ミレイは小道具にも
物凄くこだわっています。

たとえば、
オフィーリアの死に
直結する花輪です。

作品では描かれた花には、
装飾的な意味でなく
全て
ヴィクトリア朝時代の
花言葉によって表現されています。

ケシ
パンジーかなわぬ恋
ひな菊純潔
すみれ誠実早死
バラ若さ美貌
イラクサ痛み

オフィーリアの衣装にも
こだわり、
見つけたときの喜びを
このように記しています。

ミレイ

今日、
婦人用のすばらしい
アンティーク・ドレス
を買った。
全体が花模様
銀の縫い取りがしてある。
僕はこれを
《オフィーリア》用に
使おうと考えている。

衣装は、
正しい外光のもとで描くため
背景として設定した場所まで
持ち出したそうです。

 

オフィーリアの姿は
ロンドンに戻って描かれました。

ミレイが求めた
オフィーリアのモデルは

ミレイ

背のすらりとした
細身の女性で、
髪の毛は赤金色、
肌は結核患者の
ような白さ

でした。

オフィーリア
モデルとなったのは、
ウォルター・デヴェレル
ウィリアム・ホルマン・ハントなど
ラファエル前派
画家たちに人気だった
エリザベス・シッダルです。
オフィーリア_ジョン・エバレット・ミレイ

ミレイは、
リアルな写実を描写するため
湯がたっぷり入った
バスタブを用意し、
そのなかで彼女に
ポーズをとらせました。

バスタブの下にはランプがあり、
これで湯を暖めていました。

あるとき、
制作に没頭していたミレイ
ランプの火が
消えてしまったことに気づかず、
エリザベスは大風邪をひいてしましました。
エリザベスの父親は
怒ってミレイ
訴えると言い出しましたが、
ミレイ
治療代を支払うことで
なんとか穏便に
済ませることができたのです。

エリザベス・シッダルは、
のちに
同じラファエル前派
画家ロセッティ
オフィーリア_ジョン・エバレット・ミレイ
と結婚しますが
子供の死産
ロセッティの浮気
鬱気味となり、
鎮痛剤として飲んでいる
アヘンチンキの取りすぎで
亡くなります。
(自殺だという説もあります)

ロセッティは妻の死を悼んで
妻のエリザベス・シッダル
モデルにした作品。

《ベアタ・ベアトリクス》
オフィーリア_ジョン・エバレット・ミレイ
を描きました。

 

オフィーリア
エリザベス・シッダル
あまりにも重なった
二人の末路
オフィーリア_ジョン・エバレット・ミレイ

脳裏にこびりついて
忘れられないほど
美しく恐ろしい作品ですね。

狂気から、
オフィーリアは
目を見開いたまま
水の底に沈んでゆく
ヴィクトリア時代の評論家

 

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